
「副業禁止の会社に勤めているけど、ネットワークビジネスの誘いを受けた」「友人から『これは副業じゃない』と言われたけど、本当に大丈夫なのか不安」──このような悩みを抱えている方は少なくありません。
結論から申し上げると、副業禁止の会社でネットワークビジネスを行うことは、懲戒処分や解雇のリスクがある行為です。たとえ勧誘する側が「これは副業ではない」と説明していても、法律や就業規則の観点から見れば、多くの場合「副業」に該当します。
この記事では、副業禁止規定とネットワークビジネスの関係性を法律的な視点から解説し、実際にバレた場合のリスク、そして安全に行動するための具体的なステップをお伝えします。焦って判断する前に、まずは正しい知識を身につけましょう。
なぜ会社は副業禁止としているのか?
あなたの会社は副業OK?診断フローチャート
3分で自分の状況を正確に把握しましょう
副業禁止規定チェック
✅ 許可制・届出制の場合:正式な申請手続きを行い、承認を得てから活動開始
⚠️ 記載なし・不明の場合:人事部に確認し、会社の方針を明確に把握
🚫 全面禁止の場合:ネットワークビジネスではなく、より安全な副業を選択
重要:どのケースでも、ネットワークビジネスは職場の人間関係を利用した勧誘により信用リスクが高いため、他の副業と比べて承認が得にくい傾向があります。
副業禁止規定について考える前に、そもそもなぜ多くの企業が副業を制限しているのかを理解することが重要です。この背景を知ることで、会社側の視点と自分の立場をより冷静に判断できるようになります。
就業規則における「副業禁止条項」とは
就業規則とは、企業が従業員との間で定める労働条件や職場のルールを明文化したものです。常時10人以上の労働者を雇用する事業場では、労働基準法により就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。
この就業規則の中に、副業や兼業を制限する条項が含まれているケースが多く見られます。典型的な記載例としては、「会社の許可なく他の会社の業務に従事してはならない」「営利目的の事業を営んではならない」といった表現が使われます。
ただし重要なのは、この副業禁止条項が絶対的なものではないという点です。厚生労働省が2018年に改定した「モデル就業規則」では、副業・兼業を原則容認する方向性が示されており、社会全体として副業に対する考え方は変化しつつあります。
企業が副業を制限する3つの理由(労務・情報・信用リスク)
企業が副業を制限する背景には、主に3つの合理的な理由があります。
第一に労務管理上のリスクです。副業によって従業員の労働時間が過度に長くなると、本業でのパフォーマンス低下や健康問題につながる可能性があります。労働基準法では労働時間の上限規制があり、副業先の労働時間も通算する必要があるため、企業としては管理責任を問われるリスクを懸念します。
第二に機密情報の漏洩リスクです。特に同業他社での副業や、業務上知り得た情報を活用する形での副業は、企業の競争力を損なう可能性があります。技術情報や顧客情報などの機密が外部に流出すれば、企業に甚大な損害を与えかねません。
第三に会社の信用や評判へのリスクです。従業員の副業での行動が、所属企業のイメージに影響を与える場合があります。特にネットワークビジネスのように、勧誘活動を伴う副業では、職場の人間関係を利用した勧誘が問題になるケースも少なくありません。
これらのリスクが現実化する可能性がある場合、企業は副業を制限する正当な理由を持つことになります。
厚生労働省「副業・兼業ガイドライン」にみる解釈の変化
2018年、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、働き方改革の一環として副業・兼業の普及促進を図る方針を明確にしました。このガイドラインでは、企業が副業を制限できるのは以下の4つの場合に限定されています。
一つ目は、労務提供上の支障がある場合です。過重労働により本業に支障をきたす恐れがあるケースがこれに該当します。二つ目は、企業秘密が漏洩する場合。三つ目は、会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合。そして四つ目は、競業により企業の利益を害する場合です。
つまり、これら4つの懸念がない副業については、原則として容認する方向性が国の方針として示されているのです。
ただし、ガイドラインはあくまで指針であり、各企業の就業規則を直接変更するものではありません。したがって、現時点で副業禁止規定がある企業では、その規定が依然として有効である点には注意が必要です。
ネットワークビジネスは副業に該当するのか?
ネットワークビジネスに誘われた際、「これは副業ではなく権利収入だから問題ない」「単なる商品の愛用者になるだけ」といった説明を受けることがあります。しかし、法律や就業規則の観点から見ると、この説明は正確ではありません。
特定商取引法でのネットワークビジネスの定義
ネットワークビジネスは、法律上「連鎖販売取引」として特定商取引法で定義されています。この定義によれば、連鎖販売取引とは、商品の販売や役務の提供を行う事業であって、再販売や受託販売、同種の役務提供をする者を勧誘し、その勧誘を行った者が特定の利益を得るという仕組みのものを指します。
簡単に言えば、「商品を販売する会員を増やし、その会員が新たな会員を勧誘することで報酬を得る仕組み」がネットワークビジネスの本質です。この仕組みが適切な規制の下で運営されている場合は合法的なビジネスモデルとなります。
特定商取引法では、連鎖販売取引を行う事業者に対して、契約書面の交付義務や誇大広告の禁止、クーリングオフ制度の適用など、消費者保護のための厳格な規制を課しています。
合法なMLMと違法マルチ商法の違い
ネットワークビジネスを検討する際、必ず理解しておくべきなのが、合法なMLM(マルチレベルマーケティング)と違法なマルチ商法の違いです。
合法なMLMは、実際に価値のある商品やサービスが流通しており、特定商取引法の規制を遵守している事業です。会員が得る報酬は、主に商品の販売による利益から生まれます。大手企業が運営するMLMの多くは、法律に則った適切な事業展開を行っています。
一方、違法なマルチ商法(ネズミ講を含む)は、実態のない商品を高額で販売したり、入会金や商品購入を強要したりするものです。特に「無限連鎖講の防止に関する法律」で禁止されているネズミ講は、会員を増やすこと自体が収益源となっており、後から参加した人ほど損失を被る構造になっています。
違法なマルチ商法に関わってしまうと、副業禁止規定に違反するだけでなく、刑事罰の対象となる可能性もあります。「簡単に稼げる」「必ず儲かる」といった勧誘文句には特に注意が必要です。
合法なMLM vs 違法マルチ商法
正しく見分けるための8つのチェックポイント
| 比較項目 | 合法なMLM (マルチレベルマーケティング) |
違法マルチ商法 (ネズミ講含む) |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 特定商取引法に基づき適法に運営 合法 | 無限連鎖講防止法・詐欺罪に該当 違法 |
| 商品・サービス | 実在する価値のある商品を適正価格で販売 | 実態のない商品、または市場価格と大きく乖離した高額商品 |
| 収益構造 | 商品販売による利益が主な収益源 | 会員勧誘そのものが収益源(金銭配当型) |
| 入会金・初期費用 | なし、または合理的な範囲の登録料のみ | 高額な入会金や商品購入の強要あり |
| 勧誘方法 | 氏名・勧誘目的を最初に明示。クーリングオフ制度あり | 「必ず儲かる」等の断定的判断の提供。強引な勧誘 |
| 在庫リスク | 返品制度あり。過剰な在庫購入を強要しない | 大量在庫購入の強要。返品不可 |
| 企業の透明性 | 会社情報・報酬プラン・契約内容が明確 | 運営実態が不明確。責任者が特定できない |
| 成功率 | 一部の人のみが継続的収入を得る(現実的な説明あり) | 「誰でも簡単に稼げる」と虚偽の説明 |
1. 特定商取引法に基づく表示があるか(会社名・住所・電話番号・責任者名)
2. 消費者庁や国民生活センターで悪質商法として注意喚起されていないか
3. 契約書面に「クーリングオフ」の記載があるか
4. 「必ず儲かる」「誰でも成功」などの断定的な勧誘文句がないか
少しでも疑問を感じたら、契約前に消費生活センター(188)や弁護士に相談することを強くお勧めします。
副業禁止規定とネットワークビジネスの関係性
ここで本題に戻りましょう。合法なMLMであっても、それが副業禁止規定に抵触しないわけではありません。
就業規則における「副業」の定義は、一般的に「本業以外で報酬を得る活動」を指します。ネットワークビジネスでは、商品の販売や会員の勧誘によって報酬を得る仕組みになっているため、たとえそれが「権利収入」や「不労所得」と呼ばれていても、実質的には副業に該当すると判断されるケースがほとんどです。
特に注意すべきは、勧誘活動を行う場合です。会員を増やすために知人や同僚に声をかける、SNSで集客活動を行う、セミナーに参加するといった行為は、明らかに「事業活動」とみなされます。
単に自分で商品を購入して使用するだけなら副業とはいえませんが、それで報酬を得たり、他者を勧誘したりする段階になれば、副業として扱われる可能性が高くなります。
さらに、ネットワークビジネスは前述した企業が懸念する3つのリスクすべてに関わる可能性があります。勧誘活動に時間を取られて本業に支障が出る労務リスク、職場の人間関係を利用した勧誘による信用リスク、そして場合によっては顧客情報を流用するリスクなどです。
副業禁止の会社でネットワークビジネスをしたらどうなる?

実際に副業禁止の会社でネットワークビジネスを行い、それが発覚した場合、どのような事態が想定されるのでしょうか。ここでは具体的なリスクと、バレる経路について詳しく見ていきます。
懲戒処分・解雇のリスク(実際の事例)
副業禁止規定に違反した場合、企業は就業規則に基づいて懲戒処分を行うことができます。懲戒処分には軽いものから順に、戒告、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などの段階があります。
ネットワークビジネスの場合、特に問題視されやすいのは職場内での勧誘行為です。実際の事例として、職場の同僚や部下に対して執拗に勧誘を行い、業務に支障をきたしたとして懲戒解雇となったケースが複数報告されています。
また、会社の顧客情報を利用して勧誘活動を行った場合は、機密情報の漏洩として重い処分の対象となります。
裁判例を見ると、副業による解雇が有効と認められるためには、企業の正当な利益を害する程度に達していることが必要とされています。単に副業をしていたというだけでは解雇の正当性は認められにくく、本業への支障や会社の信用失墜などの具体的な損害が求められます。
ただし、懲戒解雇までいかなくても、減給や降格などの処分を受けることで、キャリアや収入に大きな影響が出る可能性は十分にあります。また、職場での信頼関係が損なわれ、居づらくなって自主退職を選ばざるを得ない状況に追い込まれるケースも少なくありません。
懲戒処分の段階と重さ
軽い処分から重い処分まで6段階を徹底解説
口頭または書面で注意を受ける最も軽い処分。将来同様の行為をしないよう警告されます。給与や昇進への直接的な影響は小さいですが、記録として残ります。
書面による厳重注意と始末書の提出を求められる処分。戒告より重く、人事記録に明確に残るため、昇進や評価に影響する可能性があります。
一定期間、給与の一部を減額される処分。労働基準法により、1回の減給額は平均賃金の1日分の半額以内、総額は1ヶ月の給与総額の10%以内と制限されています。
一定期間の出勤を禁止され、その期間の給与は支払われません。通常は数日〜2週間程度。キャリアへの影響が大きく、職場復帰後も信頼回復に時間がかかります。
役職や等級を下げられる処分。給与の減額を伴うことが多く、キャリアへの影響は極めて深刻です。一度降格されると、元の地位に戻ることは困難な場合がほとんどです。
最も重い処分で、即時解雇となります。退職金の全額または一部が不支給となり、転職時の履歴書にも影響します。次の就職活動でも大きな障害となる可能性があります。
会社にバレる4つの経路(住民税・SNS・社内通報・人間関係)
副業が会社にバレる4つの経路
実際の発覚パターンとリスク度を解説
副業収入があると住民税額が増加します。会社が給与から天引き(特別徴収)している場合、経理担当者が税額の変動に気づき、副業の存在が発覚するケースがあります。
発覚リスク: 高FacebookやInstagramでの商品宣伝、勧誘投稿から発覚。実名アカウントや顔写真の投稿により、同僚や上司の目に触れる可能性が高くなります。
発覚リスク: 高職場の同僚への勧誘行為が原因で、不快に感じた相手が上司や人事部に報告。特に執拗な勧誘は、通報リスクが極めて高くなります。
発覚リスク: 高頻繁なセミナー参加、商品の熱心な勧め、行動パターンの変化から周囲が気づくケース。日常会話の中で意図せず情報が漏れることも。
発覚リスク: 中「バレなければ大丈夫」という考えは危険です。特にネットワークビジネスは勧誘活動を伴うため、発覚リスクが非常に高い副業です。就業規則を確認し、リスクを理解した上で慎重に判断しましょう。
「バレなければ大丈夫」と考える人もいるかもしれませんが、実際には様々な経路から副業が発覚します。
一つ目は住民税からの発覚です。副業で一定以上の収入を得ると、確定申告が必要になります。住民税は所得に応じて計算されるため、副業収入があると住民税額が増加します。
多くの企業では給与から住民税を天引き(特別徴収)しているため、経理担当者が住民税額の変動に気づき、副業の存在が明らかになることがあります。
二つ目はSNSやインターネット上での活動です。ネットワークビジネスでは、FacebookやInstagramなどのSNSで商品を宣伝したり、勧誘活動を行ったりするケースが多く見られます。実名でのアカウント運用や、顔写真の投稿によって、同僚や上司の目に触れる可能性は予想以上に高いものです。
三つ目は社内での通報です。職場の同僚に勧誘を行った場合、その同僚が不快に感じて上司や人事部に報告するケースがあります。また、勧誘を断った同僚が、他の社員に注意喚起する過程で情報が広まることもあります。
四つ目は人間関係からの漏洩です。ネットワークビジネスに熱心に取り組むほど、日常会話や行動パターンに変化が現れます。頻繁にセミナーに参加する、休日の予定が埋まっている、特定の商品を熱心に勧めるといった行動から、周囲が気づくことがあります。
「バレない」方法よりも大切な”確認すべきこと”
ここまで読んで、「それでもバレないようにする方法はないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、本当に大切なのは「バレないようにする方法」を探すことではなく、そもそも自分がその副業をすべきかどうかを冷静に判断することです。
まず確認すべきは、あなたの会社の就業規則です。副業禁止と一口に言っても、その内容は企業によって異なります。完全に禁止している会社もあれば、届出制や許可制を採用している会社もあります。
次に考えるべきは、そのネットワークビジネスが本当に信頼できるものかどうかです。合法的なMLMであっても、実際に継続的な収入を得られる人は一部に限られます。多くの場合、初期投資や在庫購入にかかる費用を回収できないまま活動を終える人が多いのが現実です。
さらに重要なのは、仮に副業が成功したとしても、それによって失うものとのバランスです。安定した本業の収入と職場での信頼関係を犠牲にしてまで、不確実なネットワークビジネスに取り組む価値があるのか、慎重に考える必要があります。
副業禁止でもネットワークビジネスをしたい場合の注意点
それでもネットワークビジネスに可能性を感じ、挑戦してみたいと考える場合、どのような点に注意すべきでしょうか。ここでは、リスクを最小限に抑えるための具体的な確認事項をお伝えします。
事前に就業規則を確認する方法
まず最初に行うべきは、自社の就業規則の詳細な確認です。就業規則は労働基準法により、従業員が自由に閲覧できる状態にしておくことが企業に義務付けられています。
多くの企業では、入社時に就業規則のコピーを配布するか、社内のイントラネットで公開しています。人事部や総務部に問い合わせれば、閲覧方法を教えてもらえます。「副業に興味があるので確認したい」という理由で閲覧を求めることは、まったく問題ありません。
就業規則を確認する際は、以下のポイントに注目してください。副業が完全に禁止されているのか、それとも許可制や届出制なのか。禁止または制限される副業の範囲はどこまでか。違反した場合の懲戒処分の内容はどのようなものか。これらを正確に把握することが、適切な判断の第一歩となります。
上司や人事への相談はどうすべき?
就業規則を確認した結果、許可制や届出制であることがわかった場合、上司や人事部に相談することを検討しましょう。ただし、相談の仕方には注意が必要です。
相談する際は、まず副業の内容を具体的に説明できるよう準備してください。ネットワークビジネスの場合、企業名、取り扱う商品やサービス、報酬の仕組み、活動に必要な時間などを明確に伝えられるようにしておきます。
また、本業に支障をきたさないこと、職場の人間関係を利用した勧誘は行わないこと、会社の信用を損なう行為はしないことなど、企業側が懸念する点についてあらかじめ配慮した計画を示すことが重要です。
ただし、正直に相談した結果、明確に禁止される可能性もあります。その場合は、その判断を尊重することが賢明です。相談したにもかかわらず禁止されたのに活動を続けた場合、悪質性が高いと判断され、より重い処分を受けるリスクがあります。
勧誘・セミナー参加によるトラブルを避ける心得
ネットワークビジネスで最もトラブルになりやすいのが、勧誘活動とセミナー参加に関する問題です。
勧誘活動については、特定商取引法で厳格なルールが定められています。勧誘に際しては、最初に自分の氏名や勧誘目的であることを明示しなければなりません。また、「必ず儲かる」「誰でも成功する」といった断定的判断を提供することは禁止されています。
職場の同僚や取引先に対する勧誘は、たとえ就業時間外であっても避けるべきです。人間関係が悪化するだけでなく、会社の信用問題にも発展しかねません。友人や知人への勧誘であっても、相手が明確に断った場合は、それ以上しつこく勧誘してはいけません。
セミナー参加についても注意が必要です。頻繁に平日の夜や休日にセミナーに参加していると、本業の業務に影響が出る可能性があります。睡眠不足や疲労により仕事のパフォーマンスが低下すれば、副業の存在が疑われるだけでなく、評価にも悪影響を及ぼします。
懲戒リスクを回避するための3ステップ
懲戒リスクを回避するための3ステップ
安全に副業を始めるための確実な手順
まずは自分の立場を正確に理解することから始めます。感情や周囲の意見に流されず、客観的な事実を把握することが最重要です。
許可制・届出制の会社であれば、正式な手続きを踏むことで合法的に副業ができます。隠れて行うより、透明性を保つ方が長期的に安全です。
判断に迷った場合や、トラブルが発生しそうな場合は、一人で抱え込まず専門家の力を借りることが最善の選択です。
正しい手順を踏むことで、懲戒処分のリスクを最小限に抑えられます。たとえ副業が承認されない場合でも、会社との信頼関係は維持され、より安全な代替案を探す余裕が生まれます。
ネットワークビジネスに限らず、副業を検討する際には、懲戒リスクを回避するための適切なステップを踏むことが不可欠です。ここでは、安全に行動するための具体的な手順をご紹介します。
① 法律・会社規定を必ず確認
第一のステップは、法律と会社規定の両面から、自分の立場を正確に理解することです。
法律面では、労働基準法、特定商取引法、無限連鎖講の防止に関する法律など、関連する法規制を把握しておくことが重要です。特にネットワークビジネスの場合、そのビジネスモデルが法律に適合しているかどうかを確認する必要があります。
企業の規定については、就業規則だけでなく、入社時に交わした雇用契約書や誓約書も再確認しましょう。競業避止義務や秘密保持義務について特別な条項が設けられている場合もあります。
また、公務員の場合は国家公務員法や地方公務員法により、営利企業への従事が制限されているため、一般企業とは異なる厳しい規制があることを理解しておく必要があります。
② 副業届・兼業申請が必要な場合の手続き
自社の制度が許可制や届出制である場合、正式な手続きを経ることが必須です。
副業の届出や申請を行う際は、書面での提出が一般的です。多くの企業では専用の申請書式を用意しているので、人事部に確認してください。申請書には、副業の内容、予定される活動時間、報酬の見込み額、本業への影響がないことの説明などを記載します。
申請後、企業側は内容を審査し、承認または不承認の判断を行います。審査には数週間かかる場合もあるため、余裕を持って申請することが大切です。
もし不承認となった場合、その理由を確認し、条件を変更すれば承認される可能性があるかどうかを聞いてみることもできます。ただし、企業側の判断には正当な理由がある場合が多いので、その判断を尊重する姿勢が重要です。
③ リスクを感じたら専門家(弁護士・社労士)へ相談
副業に関する判断に迷った場合や、すでにトラブルが発生している場合は、専門家に相談することを強くお勧めします。
弁護士に相談すれば、就業規則の解釈、副業禁止規定の有効性、懲戒処分のリスクなどについて法律的な観点からアドバイスを受けられます。また、ネットワークビジネスそのものが法律に適合しているかどうかの判断も仰げます。
社会保険労務士は、労働法規や就業規則の専門家です。副業による労働時間の管理、社会保険の取り扱い、税務上の注意点などについて、実務的なアドバイスを提供してくれます。
初回相談は無料で受け付けている法律事務所や社労士事務所も多くあります。また、自治体の法律相談窓口や労働相談センターでも、基本的な相談に応じてもらえます。問題が深刻化する前に、早めに専門家の意見を聞くことが、最善の結果につながります。
ネットワークビジネス以外の安全な副業3選【合法・バレにくい】
ネットワークビジネス以外の安全な副業5選
リスクが低く、スキルアップにもつながる副業を厳選
・文章力が本業にも活きる
・時間と場所を選ばない
・ポートフォリオで実績を積める
・クリエイティブスキルが向上
・技術力次第で高収入
・将来性のあるスキル
・スキマ時間を活用できる
・リスクがほぼゼロ
・継続保守契約で安定収入
・実績が積みやすい
人を巻き込まず、自分一人で完結する副業を選びましょう。職場の人間関係に影響しません。
本業にも活かせるスキルが身につく副業なら、キャリアアップにもつながります。
オンラインで完結する副業は、バレるリスクが低く、時間の自由度も高いです。
ネットワークビジネスのリスクを考えると、より安全で確実な副業を選択することも賢明な判断です。ここでは、副業禁止規定に抵触しにくく、スキルアップにもつながる副業をご紹介します。
スキル型副業(ライター・デザイン・プログラミング)
スキル型の副業は、自分の専門知識や技能を活かして収入を得る方法です。代表的なものとして、Webライティング、グラフィックデザイン、プログラミングなどがあります。
Webライティングは、企業のブログ記事やWebサイトのコンテンツを執筆する仕事です。初心者でも始めやすく、文章力を磨きながら収入を得られます。単価は案件によって異なりますが、経験を積むことで高単価の案件を受注できるようになります。
グラフィックデザインは、ロゴ制作、バナー作成、名刺デザインなどの需要があります。IllustratorやPhotoshopなどのツールを使える方に適しています。ポートフォリオを充実させることで、継続的な案件獲得につながります。
プログラミングは、Webサイトやアプリの開発、システム改修などの案件があります。技術力があれば高単価の案件を受注でき、本業でのキャリアアップにもつながるスキルです。
これらのスキル型副業の利点は、明確な成果物があり、仕事の範囲が明確であることです。また、オンラインで完結するため、時間や場所の制約が少なく、本業との両立がしやすい点も魅力です。
在宅ワーク(クラウドソーシング・Web制作)
在宅で完結する副業は、副業禁止規定に抵触するリスクが比較的低く、プライバシーも保ちやすい選択肢です。
クラウドソーシングサービスを利用すれば、データ入力、文字起こし、アンケート調査など、特別なスキルがなくても始められる案件が豊富にあります。代表的なプラットフォームとしては、クラウドワークス、ランサーズ、ココナラなどがあります。
Web制作は、HTML、CSS、JavaScriptなどの知識があれば、企業や個人のWebサイト制作を請け負えます。WordPressを使ったサイト構築の需要も高く、継続的な保守契約につながることもあります。
在宅ワークのメリットは、通勤時間が不要で、自分のペースで作業できることです。深夜や早朝など、本業に支障をきたさない時間帯を選んで作業できます。また、職場の人に会うリスクがないため、副業していることが知られにくいという利点もあります。
会社にバレにくい副業の特徴と選び方
副業を選ぶ際、会社にバレにくいという観点から考えると、いくつかの共通する特徴があります。
第一に、対面での活動が少ないことです。オンラインで完結する副業であれば、職場の人や取引先と偶然会うリスクがありません。
第二に、勧誘活動を伴わないことです。ネットワークビジネスのように人を巻き込む必要がある副業は、どうしても情報が広まりやすくなります。自分一人で完結する仕事の方が、秘密を保ちやすいでしょう。
第三に、本業と利益相反しないことです。同業他社での副業や、本業の顧客と競合する事業は避けるべきです。全く異なる分野での副業であれば、企業側も問題視しにくくなります。
第四に、確定申告時に住民税を自分で納付する方式を選択することです。副業の所得について、住民税を「普通徴収」(自分で納付)にすることで、会社に通知される住民税額の変動を避けられます。ただし、これは給与所得以外の所得に限られ、副業先でも給与として支払われる場合は特別徴収となるため注意が必要です。
体験談|副業禁止の会社でネットワークビジネスをした結果
ここでは、実際に副業禁止の会社でネットワークビジネスに関わった人々の体験談をご紹介します。これらは複数の事例を基にした実話を元にしており、あなたの判断材料になるはずです。
「バレて懲戒になった同僚」のケース
Aさん(30代・製造業勤務)は、学生時代の友人から健康食品のネットワークビジネスに誘われました。「副業ではなく、愛用者として商品を使うだけ」という説明を信じ、軽い気持ちで始めたそうです。
最初は自分で商品を購入して使用するだけでしたが、次第に会員を増やすよう促され、職場の同僚数人に声をかけるようになりました。昼休みや就業後に商品の説明をしたり、休日のセミナーに誘ったりする行動が目立つようになったのです。
ある日、勧誘を受けた同僚の一人が上司に相談したことで、Aさんの活動が人事部の知るところとなりました。調査の結果、就業規則の副業禁止条項に違反していることが明らかになり、Aさんは減給処分を受けることになりました。
それだけでなく、職場での人間関係も大きく損なわれました。勧誘を受けた同僚たちからは距離を置かれ、「お金のために友人を利用する人」というレッテルを貼られてしまったのです。Aさんは処分後も職場に居づらくなり、結局は自主退職を選ぶことになりました。
Aさんは後に「副業で得られたかもしれない収入よりも、失った信頼と安定した給与の方がはるかに大きかった」と振り返っています。
「上司に相談して許可を得た人」のケース
Bさん(40代・IT企業勤務)の場合は、より慎重なアプローチを取りました。ネットワークビジネスの誘いを受けた際、まず自社の就業規則を詳しく確認したのです。
Bさんの会社は副業届出制を採用しており、一定の条件下で副業が認められていました。そこでBさんは、直属の上司に正直に相談することにしました。ビジネスの内容、活動予定時間、職場の人間関係を利用しないこと、本業に支障をきたさないことなどを説明したのです。
上司はBさんの誠実な姿勢を評価し、人事部に取り次いでくれました。ただし、人事部からは厳しい条件が提示されました。職場の同僚や取引先への勧誘は絶対に行わないこと、社名を出して活動しないこと、月に一度活動報告を提出すること、本業の評価が下がった場合は副業を中止することなどです。
Bさんはこれらの条件を受け入れ、限定的な範囲でネットワークビジネスに取り組みました。結果として、大きな収入を得ることはできませんでしたが、会社との信頼関係を保ちながら経験を積むことができたと言います。
最終的にBさんは、ネットワークビジネスよりも自分のIT技術を活かしたフリーランス案件の方が適していると気づき、会社の許可を得た上で、より専門性の高い副業にシフトしていきました。
「やらずに他の副業を選んで正解だった」話
Cさん(20代・金融機関勤務)は、大学時代の先輩から美容商品のネットワークビジネスに誘われました。先輩は「月に数十万円稼いでいる」と豪語し、セミナーへの参加を強く勧めてきました。
しかしCさんは、まず冷静に情報収集を行いました。インターネットで同じビジネスの評判を調べ、実際に収益を上げている人の割合や、初期投資の回収率などのデータを確認したのです。その結果、継続的に収入を得られている人はごく一部であり、多くの人が赤字で終わっている実態を知りました。
さらに、Cさんの勤務先は金融機関であり、就業規則が特に厳格でした。副業は原則禁止であり、許可を得るハードルも非常に高い状況でした。金融機関という業界の特性上、信用を損なう行為には特に厳しい姿勢が取られていたのです。
Cさんは先輩の誘いを丁重に断り、代わりに在宅でできるWebライティングを始めました。クラウドソーシングサイトで案件を受注し、週末や平日の夜に執筆活動を行ったのです。最初は月に数万円程度の収入でしたが、スキルの向上とともに単価が上がり、1年後には月10万円以上を安定して稼げるようになりました。
Cさんは「あのとき先輩の誘いに乗っていたら、職場での信用を失い、キャリアに傷がついていたかもしれない。自分に合った副業を選んで本当に良かった」と語っています。ライティングスキルは本業の報告書作成にも活かせるようになり、上司からの評価も高まったそうです。
まとめ|副業禁止下で”安全に行動する”ために
ここまで、副業禁止の会社におけるネットワークビジネスのリスクと、安全に行動するための方法について詳しく見てきました。最後に、重要なポイントをまとめておきます。
ネットワークビジネスはグレーゾーンの多い副業
ネットワークビジネスは、法律的には合法なMLMと違法なマルチ商法の境界線が曖昧な場合があり、また副業禁止規定との関係でも解釈が分かれることがあるグレーゾーンの多い分野です。
たとえ勧誘する側が「これは副業ではない」「権利収入だから問題ない」と説明しても、就業規則上は副業に該当する可能性が高いことを理解しておく必要があります。特に、勧誘活動を伴う場合や、定期的な収入が発生する場合は、明確に副業とみなされます。
また、ネットワークビジネスは職場の人間関係を利用した勧誘につながりやすく、企業が最も懸念する「会社の信用を損なう行為」に該当しやすいという特徴があります。懲戒処分のリスクだけでなく、人間関係の悪化による居づらさも大きな問題となります。
法的知識と冷静な判断が安心を生む
副業を検討する際に最も重要なのは、感情的な判断ではなく、法的知識に基づいた冷静な判断です。
まず、自社の就業規則を正確に理解することが第一歩です。副業が完全に禁止されているのか、届出制や許可制なのか、違反した場合の処分内容はどうなっているのかを確認しましょう。
次に、検討している副業の内容を客観的に評価することが大切です。本当に継続的な収入が見込めるのか、初期投資を回収できる可能性はどの程度なのか、そのビジネスモデルは法律に適合しているのかを、第三者の意見も参考にしながら判断してください。
そして、リスクとリターンを天秤にかけることです。仮に副業で月数万円の収入を得られたとしても、それによって本業の給与や職場での信頼関係を失うリスクと見合っているでしょうか。長期的な視点で、自分のキャリアにとって最善の選択は何かを考えましょう。
判断に迷った場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することを強くお勧めします。専門家のアドバイスを受けることで、感情に流されない客観的な判断ができるようになります。
安全な副業を探す第一歩はこちら
もしあなたが副収入を得たいと考えているなら、ネットワークビジネスよりもリスクの低い副業を選択することを検討するのもいいでしょう。
スキル型の副業であれば、明確な成果物があり、報酬体系も明確です。Webライティング、プログラミング、デザインなどは、本業のスキルアップにもつながり、長期的なキャリア形成にも役立ちます。
在宅で完結する副業は、時間の自由度が高く、本業との両立がしやすいという利点があります。クラウドソーシングサイトを活用すれば、自分のペースで無理なく始められます。
副業を始める前には、必ず以下の確認を行いましょう。
確認チェックリスト:
- 自社の就業規則を確認し、副業に関する規定を正確に理解する
- 副業が許可制の場合は、正式な手続きを踏んで承認を得る
- 本業に支障をきたさない時間配分を計画する
- 確定申告や住民税の納付方法について税務署や税理士に相談する
- 職場の同僚や取引先を巻き込まない副業を選ぶ
- 疑問点があれば、専門家(弁護士・社労士・税理士)に相談する
副業は、適切に選択し、正しい手続きを踏めば、収入の増加だけでなく、スキルアップや人生の選択肢を広げる素晴らしい機会になります。しかし、性急な判断や不十分な確認によって、かえって自分の立場を危うくしてしまっては本末転倒です。
今日ここで得た知識を基に、あなたにとって最適な選択をしてください。焦る必要はありません。まずは情報収集から始め、冷静に判断することが、安全で確実な副業への第一歩となります。

